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村上睦/トリアージ・システムで災害医療の難しさを学ぶ


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TOSSランド No.

トリアージ・システムで災害医療の難しさを学ぶ


TOSS福井 村上睦

概要
中学校道徳。災害医療の現場で導入されている「トリアージ」というシステム。1人でも多くの命を救うためのシステムであるが、運用にあたる救助隊や医師の精神的負担は大きい。きれいごとだけでは済まない災害医療の実態を学ぶ。(TOSS福井推薦)


【準備物】

  • ドラマ「コード・ブルー 2nd season」第10話
  • トリアージ・タグの実物(消防署で譲ってもらえる)
  • 色画用紙(黒・赤・黄・緑)と、トリアージ・レベルの説明を書いた掲示物


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ドクターヘリで医師たちが災害現場に到着する場面。
飛行機墜落現場から少し離れた体育館に着くと、多数の負傷者がいる。

現場に到着した医師がやらなければいけない仕事は何でしょうか。


  • 負傷者の治療
  • ケガの様子を見る
  • 治療する順番を決める


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医師たちがトリアージを開始する。
負傷者の具合を見て、トリアージ・タグを付けていく。

医師たちは何をしているのでしょうか

ここでトリアージ・タグの実物を見せる。
何枚かあれば、列や班で回して考えさせる。

  • ケガのレベルを分けている
  • 治療の優先順位をつけている

災害現場に着いた医師たちは、「トリアージ」を行います。

ここからNoteBookの画面を使って説明していく。

まず、「通常の病院」の場合です。患者の数に対して医師がたくさんいます。治療の道具もそろっています。だから、すべての患者に対して、常に最大限の治療を施すことができます。


では、たとえば夜中に医師が少ない時に急患が入ってきたらどうでしょうか。医師が1人しかいない時に、「重傷患者」と「軽傷患者」が同時に入ってきたとします。どちらを先に治療すべきですか。


全員「重傷患者」と答える。
理由は「先に治療しないと命が危ないから」である。

では、次の場合はどうでしょうか。同じく医師が1人しかいない時に、もう手の施しようがない、つまり「救命不可能」な患者と、「重傷患者」が同時に入ってきたらどうしますか。


ほとんどが「重傷患者」と答える。
数名が「救命不可能な患者」と言う。理由を聞くと、「助かる可能性はゼロではないから」と言う。
意見を認めつつ、「通常は、少しでも助かる可能性の大きい患者を優先的に治療します。『本当なら助かるかもしれない患者』を後回しにすることはできないのです」と説明する。

この規模が大きくなるのが災害現場です。医師に対して患者が多すぎます。また、治療に使える道具も限られていて、全員に最大限の治療ができないのです。だから、治療の優先順位を決める必要があります。これを「トリアージ」と言います。


トリアージ=治療の優先順位


ここでトリアージの4段階のレベルについて説明する。

  • :軽易な傷病で、ほとんど専門医の治療を必要としない者
  • :多少治療の時間が遅れても生命には危険がない者
  • :直ちに処置を行えば、救命が可能な者
  • :既に死亡している者、または直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能な者

色画用紙を黒板に貼りながら、簡単に例を挙げながら説明する。


トリアージというシステムは、実際の現場で取り入れられています。


例を見せる。

  • 2005.4.25「JR福知山線脱線事故」107名死亡 500名以上重軽傷
  • 2008.6.8「秋葉原通り魔事件」7名死亡 10名負傷
  • 2011.3.11「東日本大震災」1万5000人以上死亡 約5000名負傷

※「東日本大震災」の場合、死亡者数にくらべて負傷者数が異常に少ない。つまり多くの被災者が「死亡」か「軽傷」という特殊な災害であったことを補足説明した。


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全身やけどを負った患者に治療を施すべきか否かを迷う医師。
トリアージの判断は医師にとっても難しく、大きな葛藤であることがわかる。

手の施しようがない患者が目の前で苦しんでいる場合、それでもトリアージの判断を優先すべきでしょうか。


多くの生徒は「トリアージを優先すべき」と答える。
が、少数の生徒は「それでも自分なら目の前の患者を治療するかもしれない」と言う。

東日本大震災の時にトリアージを行った病院の様子です。

茨城県の石巻赤十字病院は、震災時、その近辺で唯一治療が可能な病院であった。その当時の様子をブログから紹介する。

石巻赤十字病院は、連日、大勢の被災者らでごった返していた。運ばれてくる人たちには治療の優先順位を決めるトリアージタグが付けられていった。黒色のタグは死亡、または治療しても回復の見込みがないとされる。当時「黒」を担当したのが医師の日下潔さん(63)だ。日下さんは、院内の一室で床に横たえられた遺体を前に家族に死亡の確認をしなければならない。「なんで床なんかに寝かせるんだ」と語気荒く職員に詰め寄ってくる遺族。搬送された小学生の孫を低体温症で失った祖母は「お前がしっかりみていれば」と泣き叫びながら娘である母親の膝を何度もたたいた。そうした数々の光景が日下さんのまぶたに焼き付いて離れない。「黒を担当するということは、人生の最後の出口を見守ること」との思いをかみしめる。大切な家族を失った人の背中をそっと支える姿がそこにあった。


トリアージの判断は、現場の医師にとっても非常に精神的な負担が大きいものなのです。

トリアージというシステム(方法)についてどう思いますか。感想を書きなさい。


救命の優先順位を決めるというのは、何か差別みたいだけど、軽傷の患者を見ていて、まだ助かったはずの重傷患者が命を失ったら意味がないと思う。それに、治療の順番は、トリアージがなかったとしても、お医者さんが決めると思うので、トリアージはただそれを示すものだから、必要だと思います。その判断はけっこうつらいと思います。私は、将来医者になりたいけど、そんな判断ができるかというと自信がないです。


「トリアージ」で判断するのはすごく難しいことなんだと思いました。いろんな人がいるから、文句を言う人がいたり、そのまま無言の人もいる。お医者さんもすごく苦しいし、悲しい思いをしているのだと思いました。人を判断することはなかなかできないし、ケガなどを治して、もし失敗したら、患者さんに申し訳ないし、お医者さんは、すごくプレッシャーがかかるんだと思いました。


悪いことではないと思う。現場でも使われているそうだし、考え方もおかしくはないと思う。でも、実際に自分の家族が黒い札をつけられたらと思うとゾッとした。きっと赤にしてと言っていただろう。医者の立場になっても「黒」をつけるのは、僕なら無理だと思う。人の生死を決めるというのは、とても重たく、1人の人間が軽々しくできるものではないと思う。医者の人達はそういう面でも戦っているのだなと思った。



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村上睦トリアージ・システムで災害医療の難しさを学ぶ
最終更新時間:2011年11月16日 00時19分17秒

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