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村上睦/俳句の可能性


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TOSSランド No.6823701

俳句の可能性


TOSS福井 村上睦

概要
中3光村「俳句の可能性」の実践。鑑賞文の「型」を示し、視写を基本にして徐々に自分で書く量を増やしていくことで、生徒が自分なりの鑑賞文を書くことができる。(TOSS福井推薦)


  1. 俳句の可能性(1)
  2. 俳句の可能性(2)
  3. 俳句の可能性(3)
  4. 俳句の可能性(4)


俳句の可能性(1)


TOSS福井 村上睦

概要
中3光村。飯田龍太「どの子にも涼しく風の吹く日かな」の句で、内容の読み取り、俳句の決まり事、鑑賞文を扱う。鑑賞文は教師が書いたものを視写させ、自分で書ける生徒には自分で書かせた。


 内容の読み取り


板書
どの子にも涼しく風の吹く日かな  飯田龍太

ノートに写したら小さい声で3回読みなさい。

その後、追い読み、一斉読みで数回読む。

全員起立。覚えたら座りなさい。


この俳句を読んで、どんな情景が浮かびますか? 絵でも言葉でもいいのでノートに書きなさい。


書けたら持ってこさせ、板書させる。
板書したものを発表させ、必要があればくわしく説明させる。
・涼しい風が吹いている。
・子どもがたくさんいる。
・たくさんの子どもたちがハイキングをしている情景。(絵)
・子どもたちが遊んでいる情景。(絵)


 俳句の決まり事


句の季節を聞くと、「春」「夏」「秋」に分かれた。

どの言葉から季節が分かりますか?

「涼しく」

俳句には必ず季節を表す言葉が入っています。「季語」といいます。


「涼しく」はいつの季語でしょうか?

「夏」

板書 季節を表す言葉=季語

俳句には、もうひとつ決まり事があります。何でしょうか?

五・七・五の音。

板書 五・七・五のリズム=定型

五・七・五のリズムで、季語が入っている俳句のことを「有季定型」といいます。

「季語」と「定型」をまとめて「有季定型」と板書。


 鑑賞文


季節など、ある程度限定される部分もありますが、俳句は読む人が自由に想像できる範囲がとても広いです。


そこで、みなさんの自由な想像を広げて、この俳句の鑑賞文を書いてもらいます。


ワークシートを配る。
400字詰め原稿用紙の右側(200字)に、教師の書いた鑑賞文が載せてある。

鑑賞文
 夏の暑い日、何人かの子どもが汗をかきながら公園で遊んでいる。遊び疲れて木陰で休んでいるところへ、ふと涼しい風が吹いてきて、子どもたちの頬をなでていく。この俳句は、そんな情景を描いている。
 「涼しく」が夏の季語なので、季節は夏である。そして、気温が低ければわざわざ「涼しく」とは言わないはずだから、暑い日であると考えられる。また「どの子にも」という言葉から、子どもは複数いることが分かる。

鑑賞文を一度、範読する。
2段落構成で、1段落目では俳句の情景の説明、2段落目ではその根拠を句の中の言葉を元に述べていることを説明する。

原稿用紙の左半分に、自分なりの鑑賞文を書きます。いきなり書くのが難しい人は、右の鑑賞文を、練習のつもりでそのまま写します。



補足
鑑賞文をそのまま写した生徒が約半数、スタイルはほぼそのままで言葉や内容を少しアレンジして書いた生徒が約半数、自分なりの鑑賞文を書いた生徒が数名であった。


俳句の可能性(2)


TOSS福井 村上睦

概要
中3光村。野澤節子「せつせつと眼まで濡らして髪洗ふ」の句で、内容の読み取り、鑑賞文を扱う。教師が書いた鑑賞文を視写させ、自分で書ける生徒には自分で書かせた。2回目なので、自分なりの鑑賞文を書ける生徒が増えた。


 内容の読み取り


板書
せつせつと眼まで濡らして髪洗ふ  野澤節子

ノートに写したら小さい声で3回読みなさい。

その後、追い読み、一斉読みで数回読む。

全員起立。覚えたら座りなさい。


季語は何ですか?

「せつせつと」「濡らして」「髪洗う」が出る。
「髪洗う」であることを教える。

季節はいつですか?

「夏」

作者は何をしているのですか?

髪を洗っている。
(俳句はほとんど作者=話者なので、ここでは特に区別せずに扱った。)

作者はどんな思いで髪を洗っているのでしょうか?

ノートに書かせて持ってこさせ、板書させる。
・暑いのでさっぱりしたい(多数)
・悲しい気持ち(2名)

補足
季節が夏であることを押さえた上で考えさせたので、「暑い」というイメージが強くなったと考えられる。

この句のポイントは「せつせつと」という言葉です。

「せつせつと」とはどういう意味ですか?

辞書を調べさせた。
・心に強くせまる様子

漢字で書くと「切々と」であることも確認する。

「切々と」の「切」は切実の「切」です。何か心に迫るような強い思いがある様子を表しています。


もう一度考えます。作者はどんな思いで髪を洗っているのでしょうか?

列指名で聞いた。
ほとんどが「悲しい気持ち」という答えであった。

補足
「作者のおかれている状況を、いろいろ想像して考えなさい」と指示したが、単に「悲しい気持ち」という答えがほとんどであった。

 鑑賞文


たとえば、こんな想像をしてこの句を読むこともできます。

鑑賞文を配る。
前回と同じく、400字詰め原稿用紙の右側(200字)に教師が書いた鑑賞文を載せてある。

鑑賞文
 作者は、人生の大きな悩みにぶつかっている。たとえば結婚を選ぶか仕事を選ぶか、というような重大な悩みである。髪を洗いながらも、そのことが頭から離れない。閉じた目を伝って流れ落ちる水も気にならないほど、そのことを強く思い続けているのである。
 悩みが頭から離れないということは、「せつせつと」という言葉から分かる。「せつせつと」とは、「心に強くせまる」という意味だからである。

これを参考にして、自分なりの鑑賞文を書くように指示する。


生徒の鑑賞文

作者は、戦争の時代の人で、自分は助かったが家族はみんな死んでしまった。保護された場所で髪を洗っている時、家族のことを思い出し、目から流れる水も気にならないほど、家族のことを思い続けているのである。(以下略)

毎日ふろにも入らず仕事も休み、病気の夫のいる病院で夫を側で見守っていた。だがついに夫は死んでしまう。一人静かな家に帰り、ふろに何日も入っていないことに気づく。久しぶりに髪を洗おうとすると、シャワーも浴びていないのに顔がぬれていることに気づく。ふろに入ってさっぱりするものの、心はまだどんよりくもったままである。



補足
鑑賞文をそのまま写した生徒が約4分の1、少しアレンジして書いた生徒が約4分の3弱、自分なりの鑑賞文を書いた生徒が4名であった。


俳句の可能性(3)


TOSS福井 村上睦

概要
中3光村。大峯あきら「虫の夜の星空に浮く地球かな」の句で、内容の読み取り、鑑賞文を扱う。鑑賞文はなるべく自分で書くように指示し、難しい生徒には教師が書いた鑑賞文を視写させた。3回目なので、ほとんどの生徒が自分なりの鑑賞文を書けた。


 内容の読み取り


板書
虫の夜の星空に浮く地球かな  大峯あきら

ノートに写したら小さい声で3回読みなさい。

その後、追い読み、一斉読みで数回読む。

全員起立。覚えたら座りなさい。


作者に見えているものは何ですか?

・虫
・星空
・地球
・月

作者に虫は見えているのですか?

挙手で聞くと「見えている」が少数、「見えていない」が多数であった。
理由をノートに書かせ、発表させた。

(見えている)
・虫は蛍である。だから見えている。
(見えていない)
・作者は星空を見上げている。だから虫は見ていない。
・あたりは暗くて虫は見えない。


この句の中で対比されているものは何ですか?

ノートに書かせ、持ってこさせた。
・「虫」と「星空」
・「虫」と「地球」
・「星空」と「地球」

3者(虫、星空、地球)が三角関係のように、それぞれ対比になり得ることを板書で説明した。

中に、「虫の鳴き声があたりに響いている様子」と「星たちが夜空にまたたいている様子」という、「状況」の対比を書いた生徒がいたので、発表させて大いにほめた。

 鑑賞文


対比という観点でこの俳句を読み取った鑑賞文だと、こうなります。


鑑賞文を配る。
前回と同じく、400字詰め原稿用紙の右側(200字)に教師が書いた鑑賞文を載せてある。

鑑賞文
 秋の夜、作者には虫の小さな鳴き声が聞こえている。そして、ふと見上げると、いくつもの星たちが夜空に浮かんでいる。「ああ、虫たちも自分も、この地球という星に住む小さな命の一つなのだなあ」と感動を覚えた。
 この俳句には「虫」と「地球」という対比が使われている。つまり、小さな命と大きな星との対比である。この対比によって、虫や自分という命の小ささを強調しているのである。

これを参考にして、自分なりの鑑賞文を書くように指示する。


生徒の鑑賞文

 もうずっと前に陽は沈み、月や星たちがきらきらと輝き始めた秋の夜。作者はたんぼ道をとぼとぼ歩いていた。と、色んな虫たちが合唱しているかのように鳴き始めた。ふと空を見ると、黒い海の中に青白い光がいくつもあった。それらの光景に感動し、自分は一人ではなく、みんなによって生かされているのだと思った。

 「虫」と「地球」とが対比され、命の大きさ、広さをより強調している。


 秋の夜、作者は外に出て蛍の飛びかっているところを眺めている。さながら星空のようだと思っていると、空を覆っていた雲がすっかり晴れ、満天の星空があらわれたような情景が読みとれる。

 作者は、蛍と星空の二つを対比し、「虫」と「地球」、つまり生命の大きさの違いに触れ、自分達は大きな地球の中で生きている小さな生命に過ぎないのだという、生命の儚さを強調している。



補足
ほとんどの生徒が、自分なりの言葉で鑑賞文を書けた。そのまま写した生徒は数名であった。


俳句の可能性(4)


TOSS福井 村上睦

概要
中3光村。尾崎放哉の句と津沢マサ子の句で、「有季/無季」および「定型/自由律」という形式を教える。その後、教科書に載っている16句から7句を指定し、中から好きな俳句を選んで鑑賞文を書かせた。



 俳句の形式


教科書で尾崎放哉「咳をしても一人」の句を読む。
追い読み、一斉読みなどで数回読む。

3文字ずつ区切って読みます。

「せきを・しても・ひとり」

普通の俳句は何音ずつ区切れますか?

5・7・5

教科書P60の8行目〜10行目を追い読みで読む。

尾崎放哉の俳句は、何という形式ですか?

自由律俳句


津沢マサ子「灰色の象のかたちを見にゆかん」の句を読む。
追い読み、一斉読みなどで数回読む。

教科書10行目〜12行目を追い読みで読む。

津沢マサ子の俳句は、何という形式ですか?

無季俳句

俳句には、「有季/無季」、「定型/自由律」という形式の違いがあります。

違いを簡単に説明する。

これらの組み合わせで、俳句には4種類の形式があります。


板書
┌────┬────┬────┐
│    │ 有季 │ 無季 │
├────┼────┼────┤
│ 定型 │    │    │
├────┼────┼────┤
│ 自由律 │    │    │
└────┴────┴────┘

ノートに写させ、空欄を埋めるように指示する。


 鑑賞文


教科書に載っている16句の中から7句を指定して、印を付けさせる。
7句を一通り音読する。

全員起立。この7句を1回ずつ読みます。全部読んだらもう1回同じように読みます。それが終わったら座りなさい。


この中から好きな句を1つ選んで、鑑賞文を書きます。

書き方を説明する。

  • 400字詰め原稿用紙の1行目に俳句と作者名を書く。
  • 2行目から、今までと同じように鑑賞文を書く。(200字を2段落構成で書く。前半に句の大意、後半に読み取りの根拠。)
  • 左半分に、句を読んだ感想を書く。


生徒の鑑賞文

ちるさくら海あをければ海へちる  高屋窓秋

 春の天気の良い日、作者は海岸沿いを一人で歩いていた。ふと近くの島を見ると、一本の桜の木があり、桜がきれいに咲いている。少し風が吹いて、花びらが海へと散り、水面に浮かぶ景色がとてもきれいで見とれている。

 「さくら」という言葉から、季節は春だということがわかる。桜の花びらの淡いピンクと、海の深い青が対比されていて、とてもきれいな風景を表現している。

 私は、この詩を読んで、「ちる」という言葉があるので、何か悲しいことを表した詩なのかと思いました。でも、よく読むと、さくらと海が対比されていることに気づきました。海の青にちる、桜のピンクがとてもきれいなので、作者のすがすがしい気持ちが表れていると思います。少し、息詰まることがあっても、それを別の方向からみてみると、よくも考えられるのではないかと思いました。

咳をする母を見上げてゐる子かな  中村汀女

 この句は、風邪をひいている母を心配する子の姿を表現している。子はまだ小学校に行っていなくて、いつものように母と遊んでもらおうと思ったら、いつも元気な母がつらそうに咳をしていた。すると子は心配になり、「どうしたの?」と母を見上げたのである。

 「見上げてゐる」という言葉から、子がまだ小さいことがわかる。

 私は、この俳句の子は、いつも通り遊んでもらおうと笑顔でお母さんのところにいったら、いつも元気なお母さんがつらそうにせきをしていて、「どうしたんだろう」ととても心配になったんだと思う。きっとこのお母さんはいつもやさしいお母さんだったんだと思う。それだけに、子の心配も、とても大きかったと思う。この俳句は母と子の愛情を、表現しているんだと思った。



補足
ほぼ全員の生徒が、自分なりの鑑賞文+感想を書くことができた。
(字数が400字に満たないものが多かった。手がかりなしで情景を想像するのは、まだ難しかったようだ。)


使用ワークシート(一太郎)をご希望の方は村上睦までメールにてご連絡下さい。

村上睦俳句の可能性
最終更新時間:2010年07月25日 22時32分48秒

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