母が、大きくなっていたんだね、とヒロユキのひざを曲げて棺に入れました。
という部分を読み、線を引く。
「ヒロユキを棺に入れる時」という意見がほとんどであった。
「ヒロユキを棺に入れる前ですか? 入れた後ですか?」と聞くと、「入れる前」と言う。そこで、
ヒロユキが棺に入らない ↓ 「大きくなっていたんだね」 ↓ ヒロユキのひざを曲げて棺に入れた
という流れを確認した。
「今日の授業を振り返って、授業全体をまとめながら書きなさい」と指示し、発問の答えを、授業のまとめの作文として書かせた。
生徒の作文
ヒロユキが死んだ時は、ギリギリがまんしていた。あまり食べさせていなかったから成長していないと思っていたのに、少し大きくなっていて、でも体重は変わっていなくて、もっと食べさせてあげれてたら…と思ったから。忙しかったし、体重も変わっていなかったから気づかなかったけれど、この棺に入れようとして入らなかった時、子どもの成長を実感したから。そして、お父さんにヒロユキが生まれてから顔も見せてあげられず死んでしまい、また、ヒロユキも一度も父の顔を見ずに死んでいったことに申し訳ない気持ちになったから。「僕」がほしがっていた弟なのに、生まれて間もなく死んでしまい、「僕」にも悲しい思いをさせてしまったと思ったから。
母はヒロユキの成長が、棺に入れようとした時まで分からなかったのがくやしかったんだと思う。理由は疎開する前でも、疎開してからも、ヒロユキに満足に栄養を採らすことができなかったし、ヒロユキを世話している時も、栄養が十分に採れないため体重が増えず、ヒロユキの成長を知る事ができなかったからだ。なので、ヒロユキにあやまりたい気持ちや自分へのくやしさのために泣いたんだと思う。
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