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村上睦/大人になれなかった弟たちに……(4)


大人になれなかった弟たちに……(4)


TOSS福井 村上睦

概要
疎開先を探して親戚を訪ね、断られる場面を取り上げる。主発問は「母は何から子どもたちを守っているのか」。


母が疎開先を探すため、「僕」たちを連れて親戚を訪ねる場面を読む。

文中に「 」がつけられる部分があります。教科書に書き込みなさい。


  • 「疎開しよう」
  • 「うちに食べ物はない」
  • 「帰ろう」


そのときの顔を、僕は今でも忘れません。

という部分に線を引く。

「そのとき」とはいつですか。


  • 「帰ろう」と言った時
  • くるりと後ろを向いた時

「そのときの顔」とはどんな顔ですか。


  • 強い顔
  • 悲しい悲しい顔
  • 美しい顔

僕たち子供を必死で守ってくれる母の顔は、美しいです。

母は子どもたちを何から守ってくれるのですか。


書けた生徒から板書させた。

  • 空襲
  • 戦争
  • 命の危険
  • 悲しさ
  • 恐怖
  • 苦しさや悲しさ

この中で「おかしい」と思うものを1つ選んで意見を書きなさい。


  • 子どもたちは「悲しい」とは感じていないから「悲しさ」はおかしい。

最後に教師の考えを説明したが、自分でもよくまとまっていなかった。
取り上げた場面は以下である。

 あまり空襲がひどくなってきたので、母は疎開しようと言いだしました。それである日、祖母と四歳の妹に留守番を頼んで、母が弟をおんぶして僕と三人で、しんせきのいる田舎へ出かけました。ところが、しんせきの人は、はるばる出かけてきた母と弟と僕を見るなり、うちに食べ物はないと言いました。僕たちは食べ物をもらいに行ったのではなかったのです。引っ越しの相談に行ったのに。母はそれを聞くなり、僕に帰ろうと言って、くるりと後ろを向いて帰りました。

 そのときの顔を、僕は今でも忘れません。強い顔でした。でも悲しい悲しい顔でした。僕はあんなに美しい顔を見たことはありません。僕たち子供を必死で守ってくれる母の顔は、美しいです。


補足
母は「しんせきの人」に誤解され、家に帰ることを決めている。家に帰るということは、再び空襲の危険に子どもたちをさらすことになる。これは「空襲から子どもたちを守る」行動と言えるか。本当に子どもたちの命を守りたいのなら、誤解されようが見下されようが、なんとか頼み込んで疎開させてもらうべきではないか。つまり、この行動は「空襲」や「命の危険」といった実害から子どもたちを守る行動ではないのである。では何から守っているというのか。それは、「しんせきの人」の「非情な態度」であり、戦時下における「人間性の欠如」である。そういった精神面の被害から子どもたちを守っているのである。(だから次に疎開を決めた先は「行ったこともない山の中の親切な人」なのである。)
村上睦大人になれなかった弟たちに……(4)
最終更新時間:2011年10月15日 11時07分27秒

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